※本記事は個人の体験・考えを記録したものです。住宅購入・ローンの専門的なアドバイスは不動産会社・FP等にご相談ください。投資は自己責任でお願いします。
住宅ローンか投資か——この問いへの私の答えは、「どちらが正解かは人による」です。9年間賃貸のまま投資を続け、49歳で運用資産6,000万円に届いた今も、その考えは変わりません。
逃げているように聞こえるかもしれませんが、9年間投資を続けてきた私が本気でそう思っている理由を、この記事に書き残しておきます。
私は40歳で投資を始め、9年間ずっと賃貸暮らし。住宅ローンを組まずに投資を続けた結果、2026年に運用資産は6,000万円に届きました。「家を買わなかったのが正解だった」という話ではなく、「私にはそっちが合っていた」という記録です。
この記事では、家を買わなかった理由・迷った瞬間・そして9年後の正直な気持ちを書いています。住宅か投資かで迷っている40代の方の、何かのヒントになれば幸いです。
40歳の私が家を買わなかった4つの理由
借金が、怖かった
正直に言うと、最初の理由は単純です。借金が嫌いでした。
住宅ローンは「良い借金」「レバレッジを活かせる」と言われることがあります。理屈はわかります。でも、私は感覚として「数千万円の借金を20〜35年背負う」ことが怖かった。その感覚を無理に上書きすることはしませんでした。
「投資的に考えれば借金もOK」と頭では理解していても、精神的に落ち着いていられないなら、それは自分に合っていないということだと思っています。
B/Sをプラスにできる確信がなかった
当時の私には、投資の知識も経験も浅かった。
住宅ローンは借りた瞬間から、B/S(バランスシート)上に資産(物件)と負債(ローン残債)が同時に乗る状態になります。物件価値がローン残債を上回っていれば純資産は守られますが、価値が下がれば純資産が減る。
40歳の私には「物件の価値がどう動くか」を判断する知識が足りていませんでした。理解できないリスクを抱えるより、まず投資で資産形成の基礎を作ろう——そう判断しました。
生活拠点を固定したくなかった
転勤のある仕事柄、「いつ転勤になるかわからない」という現実もありました。
家を買ったあとに転勤になれば、空き家にするか売るか貸すかの選択を迫られます。そのリスクを抱えたまま大きな買い物をする気にはなれなかった。動きやすさを保つために、賃貸を選びました。
資産形成を最優先にしたかった
住宅ローンを組むと、月々の返済がキャッシュフローを圧迫します。返済後に残る投資余力がどれくらいになるかを試算したとき、「投資に回したい額よりかなり少ない」という結果が出た。
限られた収入の中で投資の枠を最大化するには、家を買わない方が合っていると判断しました。
それでも「買えばよかったかな」と思った瞬間
迷いがなかったわけではありません。
同僚が家を建てた日
40代に入ると、上司や同僚が一軒家を建てたりマンションを購入したりする話がちらほら出てきます。
新築の内見に呼ばれたり、「子どもの学区が…」「固定資産税がいくら…」なんて会話を聞いているうちに、「自分は賃貸でいいんだろうか」という気持ちが揺らぐことがありました。
賃貸は「家賃が消えていくだけ」という言葉が頭をよぎることもある。「自分だけ取り残されているんじゃないか」という、なんとも言えない感覚です。
それでも私が動かなかったのは、この揺らぎの正体が「家が欲しい」ではなく「取り残されたくない」という焦りだ、と気づいたからです。焦りは、数千万円の買い物の理由にはならない——そう思い直しました。
資産が少ない時代、老後の生活拠点が不安だった
投資を始めてまだ資産が少なかった頃、「このまま老後になったらどこに住むんだろう」という不安を感じたことがあります。
賃貸は高齢になると審査に通りにくくなる、という話を聞いて、じわっと心に引っかかりました。「家さえ持っていれば、少なくとも住む場所だけは確保できるのに」という気持ちは、正直ありました。
住宅ローンを「B/S」で考えると何が見えるか
住宅ローンの損得を考えるとき、B/Sの視点で整理すると少しクリアになります。
たとえば、4,000万円の物件を頭金500万・ローン3,500万で購入した場合:
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 資産(物件の現在価値) | 4,000万円 |
| 負債(ローン残債) | 3,500万円 |
| 純資産 | 500万円 |
この時点では純資産500万円。——ただし、これは「買った価格で売れるなら」の話です。
新築物件は、入居した瞬間に「新築」ではなくなるため、評価額が下がると言われています(「新築プレミアムの剥落」と呼ばれます。下落幅は物件・エリアにより異なりますが、一般に数%〜2割程度と言われることが多いようです)。以下ではわかりやすくするため、仮に2割下がるケースで試算します——
| 時点 | 物件評価額 | ローン残債 | 純資産 |
|---|---|---|---|
| 購入時 | 4,000万円 | 3,500万円 | 500万円 |
| 入居直後(新築プレミアム剥落・2割減と仮定) | 約3,200万円 | 3,500万円 | ▲300万円 |
| 10年後 | 約2,800万円 | 約2,600万円 | 約200万円 |
| 20年後 | 約2,200万円 | 約1,700万円 | 約500万円 |
※上記は説明用の仮定数値です(評価減の幅・残債は物件・金利・返済条件により大きく異なります)。実際の物件価値は立地・築年数・市況次第で、価値が維持・上昇するケースもあります。個別の状況は不動産会社等にご相談ください。
頭金500万円を入れたのに、入居した瞬間に純資産がマイナスになりうる——これが、当時の私が「B/Sをプラスにできる確信がない」と感じた正体です。返済が進めば純資産は回復していきますが、初期は物件価値の変動リスクをもろに受ける期間が続きます。
B/Sに乗らないコストもある
さらに、物件価格の外側にもお金がかかります。
- 購入時の諸費用:仲介手数料・登記費用・ローン事務手数料・火災保険など。一般に物件価格の数%〜1割程度かかると言われます
- 保有中の固定費:固定資産税・都市計画税。戸建てなら修繕費の積立、マンションなら管理費・修繕積立金
- 売却時の費用:仲介手数料など
賃貸の家賃だけを「消えていくお金」と呼ぶのは片手落ちで、持ち家にも毎年確実に出ていくお金があります。
なお、「賃貸と持ち家の生涯コストはほぼ同じ」という比較試算をよく見かけますが、結論は前提条件(物件価格・金利・家賃・修繕費・住む年数)次第で簡単に逆転します。平均値で勝ち負けを判断するより、自分のB/Sとキャッシュフローで考える方が、私は納得感があると思っています。
「家は資産になる」は条件次第というのが、私の正直な感覚です。
数字に表れないリスク——「引っ越せない」ということ
B/Sやコストは数字で比較できます。でも私が個人的に重いと感じているのは、数字に表れないリスクの方です。
その代表が近隣住民リスク。ご近所トラブルや、どうしても合わない人が近くに住んでいた場合——賃貸なら引っ越せば解決しますが、持ち家ではそう簡単にはいきません(トラブル自体は賃貸でも起きうる点は同じです。違うのは「離れやすさ」です)。売るには時間も費用もかかり、ローンが残っていれば「売却額で完済できるのか」という問題までついてきます。
騒音・境界・ゴミ出し。近隣トラブルの種は、内見や事前調査ではほとんど見抜けません。「住んでみるまでわからないのに、買ったら簡単には出られない」——この非対称性が、私には重く感じられました。
賃貸の「いつでも引っ越せる」は、家賃の一部で買っている保険のようなもの。9年間住み替えの自由を持ち続けた今は、そう捉えています。
住宅購入を「投資事業」として考えると何が見えるか
B/Sやコストを整理したところで、もう一段視点を引き上げてみます。
「住宅購入は投資か、消費か、浪費か——それとも幸せのための支出か」
この問いを立てると、判断の整理がしやすくなります。
投資として見るなら「資産収支がプラスになるか」
住宅購入を投資事業として捉えるなら、問うべきは一つだけです。支払った総額(頭金+ローン返済+諸費用+維持費の合計)を、最終的に上回る価値が手元に残るか。
転売益や賃料収入が期待できる立地・物件なら「投資」が成立します。でも多くの自宅購入は、売却時に総支払額を上回ることが難しく、純粋な投資としては成立しにくいのが現実です。「家は資産」という言葉は条件つきでしか正しくない。
消費として見るなら「賃料代わりの必要経費」
住宅購入を「生活のための消費」と割り切る見方もあります。子育て環境・学区・親との距離——こうした生活上の必要を満たすための支出であれば、賃貸との比較は「コストの大小」より「どちらが自分の生活に合うか」になります。
「月々の返済が家賃以下になるなら買った方が合理的」という判断も、この消費の視点から来ています。
幸せの収支として見るなら「お金では測れない価値」
そして私が一番大事だと思うのが、この視点です。
家を買うことには、数字に表れない価値があります。
- 「ここが自分の場所」という安定感・安心感
- 家族との時間の質・子どもの育つ環境
- 老後の住まいを確保したという精神的な余裕
- 自分好みにリフォームできる自由
これらを重視するなら、B/Sの計算より先に「自分にとっての幸せとは何か」を問う必要があります。資産収支がマイナスでも、幸せの収支がプラスであれば、それは合理的な選択だと思います。
私の場合は——「投資として不確実すぎた」「消費として割り切るには金額が大きすぎた」「幸せの収支は賃貸でも十分に得られていた」——この3つが重なって、家を買わない選択が9年間続いています。
住宅ローンか投資か——40代が選ぶときの判断軸
9年間投資を続けて思うのは、住宅ローンか投資かの正解は、その人が「家を買うこと」にどんな価値を置いているかによって変わる、ということです。
「資産収支のプラス」を求めるのか、「消費として割り切れる」のか、「幸せの収支に投資する」のか——どの視点で捉えるかで、答えは変わってきます。
家を買う方が向いているかもしれない人
- 生活拠点を固定して「ここを拠点に生きる」というイメージが明確にある
- 毎月の家賃が「消えていく感覚」がストレスになっている
- 家族のために安定した住環境を提供したい
- 低金利でローンを組める属性・タイミングである
投資を優先する方が向いているかもしれない人
- キャッシュフローを最大化して資産形成を加速させたい
- 転勤・転職・ライフスタイルの変化に対応できる柔軟性を保ちたい
- 借金への心理的ストレスが大きい
- 「今の物件価値が維持されるか」に確信が持てない
私は後者でした。だから投資を選んだ。でもそれは、前者が間違いだということではありません。
9年後の正直な気持ち
今も、家を買わなかったことを後悔していません。でも「絶対にそれが正解だった」とも思っていない。
価値観や人生観は変わります。今は家を持つ選択肢は持っていませんが、将来どこかのタイミングで「そうしたい」と思えば、買うかもしれない。
9年間で学んだのは、「住宅か投資か」を一度決めたら永遠にその通りにしなければならない、ということはない、ということです。
大事なのは、自分がどう生きたいかの価値観から逆算して選ぶこと。そしてその選択に責任を持てること——だと思っています。
まとめ
- 家を買わなかった理由:借金嫌い・B/Sを判断できる自信がない・生活の自由を保ちたい・資産形成を最優先にしたかった
- 迷いはあった:同僚が家を買った時の揺らぎ、老後の住まいへの不安
- 住宅ローンはB/Sで考えると「条件次第の資産」。新築は入居直後に評価額が下がると言われ、純資産が一時マイナスになることも
- 物件価格の外側のコスト(諸費用・固定資産税・修繕費)と、「引っ越せない」という数字に表れないリスクも含めて考える
- 住宅購入は「投資(資産収支がプラスか)」「消費(必要経費として割り切れるか)」「幸せの収支(安心感・家族の思い出等)」の3つの視点で整理すると判断しやすくなる
- 正解は人の価値観・ライフスタイル次第で変わる
- どちらを選ぶにしても、自分の「なぜ」を明確にしてから決めることが大事
正解を探している方に伝えたいことは、一つだけ——「どちらを選ぶか」より先に、「自分は何を大事にしたいか」を言葉にすることです。
まず自分のB/Sを一度紙に書き出し、「今の純資産はいくらか」を確認するところから始めてみることをおすすめします。住宅か投資かで迷っている方の、何か一つのヒントになれば幸いです。
→ 9年間の全記録:40歳・500万円から6,000万円になった話
【免責事項】本記事は個人の体験・考えを記録したものです。住宅購入・住宅ローンに関する専門的な判断は、不動産会社・ファイナンシャルプランナー等の専門家にご相談ください。記事内の数値シミュレーションは説明目的の試算例であり、特定の物件・状況を保証するものではありません。投資は自己責任でお願いします。
