ご利用にあたって 本記事は、筆者個人の投資経験と調査内容を記録したものです。筆者は金融商品取引業者・投資助言業者ではなく、本記事は特定の金融商品・銘柄・証券会社の購入、売却、保有を推奨するものではありません。投資には元本割れ、減配、無配、為替変動、税制変更等のリスクがあります。投資判断は、ご自身の収入、資産状況、リスク許容度を踏まえて行ってください。

「6,000万円あるなら、もう辞めたらいいじゃないですか」——そう言われたとき、私は答えられませんでした。

数字の上では、確かに「できる」。計算もしました。それでも私は、会社を辞めませんでした。

計算の中身と、FIREしなかった理由を正直に書きます。


6,000万円でFIREできる?必要な金額を計算してみた

取り崩し計算で考えると

年間生活費 月換算 6,000万円の持続年数(運用なし・概算)
200万円 約17万円 約30年
240万円 約20万円 約25年
300万円 約25万円 約20年
360万円 約30万円 約17年

(※運用益・インフレ・税制変更を考慮しない単純計算です。実際には物価上昇や医療費増により、資金が早く減る可能性があります。)

49歳でFIREするとして、年間生活費を200万円(月17万円)に抑えられれば、取り崩しだけでも計算上は79歳まで持ちます。

FIREに必要な金額の計算式(4%ルール)

「FIREに必要な資産 = 年間生活費 × 25倍」という考え方があります。米国トリニティ大学の研究(トリニティスタディ)をもとに広まった目安で、過去データ上は30年間引き出し続けても資産が尽きない水準とされています。ただしこれは米国の過去データに基づく計算であり、将来の結果を保証するものではありません。日本の状況にそのまま当てはめることには注意が必要です。あくまで参考値としてご活用ください。

  • 年間生活費240万円(月20万円)なら:240万 × 25 = 6,000万円でちょうど
  • 年間生活費300万円(月25万円)なら:300万 × 25 = 7,500万円が必要

月20万円以内で暮らせるなら、計算上はFIREも選択肢に入る試算になりました。

配当収入120万円を加えると

私の場合、高配当株の年間配当金は約120万円(税引後・2025年実績)。月換算で10万円です。

月20万円の生活費のうち、配当で10万円をカバーできれば、取り崩しは月10万円(年120万円・概算)で済む計算になります。6,000万円から年120万円を引き出すと年率2%。数字の上では、持続しやすい試算になりました。ただし配当は減配・無配の可能性があり、将来の継続を保証するものではありません。

計算してみた結論:数字上は「成立した」。でも——

電卓を置いたとき、残ったのは数字ではなく、ひとつの問いでした。——本当に辞めたいのか?


40代で投資を始めた9年間|500万円から6,000万円まで

ここで、この6,000万円に至るまでの9年間を簡単に振り返ります。

40歳のとき、手元には500万円の貯金がありました。投資の知識はほぼゼロ。NISAも、iDeCoも、名前を知っているだけでした。

「このままでいいのか」という漠然とした不安が、私を動かしました。

それから9年。2026年の今、資産は6,000万円を超えています。(個人の実績。投資は自己責任で。)

配当金も、毎月平均10万円程度が給与とは別に入ってくるようになりました。

40歳のときの出発点を書いた記事はこちら


6,000万円になったとき、FIREを真剣に考えた

FIREを真剣に考えた時期

資産が5,000万円を超えたあたりで、FIREという選択肢が初めて現実的に見えてきました。上の試算でも「できる」という数字が出た。それでも、私はFIREしませんでした。

数字ではなく「その後の自分の生活」を考えたとき、踏み切れなかった理由が出てきました。


40代でFIREしない5つの理由|6,000万円到達でも辞めなかった本音

FIREしなかった本音の理由

朝に目的地がある。それが、思っていたより必要だった

仕事が重荷に感じることは、今もあります。でも、朝に目的地があること。週に5日、誰かと関わること。それが、思っていたより自分には必要でした。

「社会との繋がりは自分で作ればいい」と頭ではわかっていても、会社という仕組みが自然と提供してくれていたものの価値に、辞めてみないと気づけないかもしれません。

FIREした方の中には「地域コミュニティや趣味仲間で十分」という方もいると思います。ただ私は、そこまで確信が持てませんでした。

コロナ・ウクライナ・トランプ暴落を9年で乗り越えた記録


「FIREしたら何をする?」に、答えられなかった

「FIREしたら何をするか」を真剣に考えたとき、答えが出ませんでした。

旅行、趣味、ゆっくり過ごす時間。1年なら楽しいと思います。でも、それが10年、20年続くと想像すると——少し怖くなりました。

「毎日が日曜日という状態に、自分は耐えられないかもしれない」と気づきました。

FIREを選んだ人を否定したいわけではありません。ただ私には、「引退後の充実した生活像」が、まだ描けていなかったのです。


欲しかったのは「働かない自由」じゃなくて、「辞められる自由」だった

FIREを考えながら気づいたことがあります。

実は40代前半、仕事のストレスで心の病になりかけていたことがあります。辞めたかった。でも当時の経済状況を考えると、会社を辞めることもまた別のストレスと不安の要因でした。

「辞めたいけど辞められない」という状態が、一番つらかった。だからこそ、「辞められる」という心の自由が、仕事を続けられる心の支えになると信じて資産形成を続けていました。それが、私がFIREではなく「辞められる状態」を目指してきた、もうひとつの正直な動機です。

私が本当に欲しかったのは、「働かない自由」ではなく、「辞めようと思えば辞められる状態」だったということです。

  • 「この仕事が嫌になったら辞めればいい」
  • 「理不尽な残業を断っても、生活できる」
  • 「転職に失敗しても、半年は食べていける」

その感覚を、投資で手に入れました。

資産ができてから、仕事に対する姿勢が変わりました。同じ仕事をしているのに、以前よりずっと楽になった感覚があります。

生活防衛資金との向き合い方はこちら


給料がある。それだけで、暴落の朝の判断が変わる

9年間で学んだことのひとつは、「暴落は必ず来る」ということです。

コロナのときも、ウクライナのときも、トランプ相場のときも、私は一株も売りませんでした。なぜ売らずにいられたか。理由のひとつは、毎月の生活費を、投資資産に手をつけずに賄えていたからです。

給料がある。それだけで、暴落時の判断が変わります。

早期退職していたら、「生活費のために一部売らざるを得ない」という状況になっていたかもしれません。(給与収入がない場合でも、十分な配当収入や生活防衛資金があれば状況は異なります。あくまで私の場合の話です。)

高配当ポートフォリオの実態はこちら


親の介護、子の教育費、自分の健康——49歳の不安は、お金で全部は消えない

49歳になり、親の介護がいつ始まってもおかしくない年齢になりました。自分自身の健康リスクも、30代より高くなっています。

子どもの教育費、老後の医療費、家族の生活費。「6,000万円で十分か」と聞かれると、「もう少しあると安心」というのが今の感覚です。

現役でいる間は、何か想定外のことが起きたとき、給料でカバーできます。早期退職していたら、資産の取り崩しが加速します。

なお、これは49歳という年齢と私の家族構成ゆえの感覚です。独身の方や、すでに家族の生活が安定している方とは、感じ方が変わると思います。


FIREせず働き続ける選択は「我慢」ではない理由

辞められる自由を手に入れた

FIREしない理由を並べると、ネガティブに聞こえるかもしれません。でも私の感覚は逆です。

同じ会社、同じ仕事、同じ通勤電車。 でも「行かなきゃ」が「行ってもいい」に変わった。 それが、9年間の投資が私にくれた、たった一つの変化です。

投資を始める前は、「いつまでこの仕事を続けるんだろう」という漠然とした不安がありました。今は、その不安がほぼありません。


「辞められる状態」を作るためにやったこと

やったこと 目的
新NISAで毎月積み立て 非課税で長期運用
高配当株を9年間売らずに保有 年120万円の配当収入(2025年実績・税引後)
生活防衛資金を別で確保 暴落時に売らない設計
iDeCoで毎月積立 節税+老後資金

新NISAの成長投資枠の使い方はこちら

特別なことは何もしていません。毎月の積み立てと、「売らない」判断を繰り返した9年間の記録です。


まとめ:FIREより「自由に働ける状態」を目指した

FIREより辞められる自由を選んだ9年間
FIREした場合(一般論) 私の選択
働くか 早期退職する 続ける(選択として)
収入源 資産取り崩し・配当 給料+配当120万円
暴落時 生活費のために売る可能性 給料でカバーできる
社会との繋がり 自分で作る必要がある 仕事が自然に提供
不安感 先が読めない不安 「辞められる」という安心

FIREを目指す人の考え方を、私は否定しません。早期退職という選択が合う人がいることも理解しています。

私の当面の目標は金融資産1億円です。年間配当金120万円(月10万円の配当収入)はすでに達成できました。その小さな達成を積み重ねながら、今日も会社に向かっています。

ただ「6,000万円になったらFIREする」ではなく、「6,000万円があっても、働くことを選んでいる」という状態が今の私には心地よい。

あなたが投資で本当に手に入れたいのは、「辞めること」ですか? それとも「辞められること」ですか?

9年かけて、私の答えは後者でした。

9年間の全記録:40歳・500万円から6,000万円になった話