本記事は私個人の投資経験の記録です。特定の金融商品への投資を勧誘するものではなく、投資判断はご自身の責任で行ってください。

2020年2月、私の資産は急速に溶け始めました

あれは2020年2月下旬のことでした。

当時の私の運用総額はおよそ800万円。40歳で500万円からスタートし、そこに給与からの積み立てを3年間重ねた結果、ようやく運用総額がここまで来た——そんな手応えを感じていた頃です。日本の個別株(高配当銘柄)を中心に、米国ETFのSPYDやHDVも少しずつ積み上げていました。

それが、ほぼ1ヶ月で半分になりました。

2月25日(火)、日経平均は1,000円超の下落。そこから先は、毎週のように記録的な下げが続きました。3月19日には日経平均が16,500円台まで落ち込み、2020年1月の高値から約32%下落していました。私のポートフォリオは高配当株といっても商社・銀行などの景気敏感株の割合が高く、それらの銘柄の下げが著しかったため、日経平均よりはるかに大きく崩れました。

3月末の評価額を確認したとき、画面に映し出された数字は約450万円でした。投資に回した元本がおよそ800万円(追加入金も含む)だったので、含み損は−350万円超。パーセンテージで言えば−40%を超えていました。4月に入ってもずるずると下げ続け、一時は約400万円台まで沈み、マイナス50%に近い水準まで落ちました。

コロナ暴落 日経平均株価 2020年 月次推移(コロナショック時の下落と回復)

図1:2020年の日経平均株価の推移。1月の23,205円から3月に18,917円まで下落し、年末には27,444円まで回復しました。(出典:日本取引所グループ公表データを元に筆者作成)

毎朝スマホを開くのが怖かった。胃が重い日々が続きました

「暴落中でも感情的にならず冷静に」——投資本にはよくそう書いてあります。でも実際はそんなきれいな話ではありません。

毎朝6時に目が覚めると、まず頭に浮かぶのは前日のニューヨーク市場の動きでした。スマホを手に取るのが怖い。でも確認しないと気になって仕方がありません。おそるおそる証券口座のアプリを開いて、また赤い数字を見る。胃の奥がずっと重い感じが続きました。食欲もありませんでした。

「このまま0になったらどうする」「老後の資金が消えていく」——そういう考えが、仕事中でも頭の隅にちらついていました。当時の私は43歳。リタイアまでまだ20年近くあるとはわかっていても、目の前で資産が溶けていく現実は、理屈では処理できないものがありました。

正直に書きます。「こんな状態で生活していけるのか」と思った日が何日もありました。「自分の判断が間違いだったのか」という問いが何度もぐるぐると回り、夜中に布団の中で「やっぱり投資すべきじゃなかったんじゃないか」という言葉が浮かびました。40歳のときに投資を始めた判断そのものを疑い始めていました。

Twitterが「全部売れ」と言い続けた日々

SNSはもっとひどいものでした。

Twitterのタイムラインは「損切りしないと無限に落ちるぞ」「底はまだ先だ」「コロナが収束するまで絶対に買うな」という投稿で埋め尽くされていました。投資系のコミュニティでも「いまは全額キャッシュにするのが正解」という声が支配的でした。

テレビやネットで流れてくる経済ニュースの論調も「まだ下げる」「損切りすべき」という方向に傾いていました。それが毎日、じわじわと効いてきました。

それでも売らなかった理由——明けない夜はないと信じていたから

結局、私は一株も売りませんでした。

理由は当時から一貫していました。「明けない夜はない。過去の歴史を振り返れば、株式市場は長期では回復を繰り返してきた」——そう信じていたからです。

日本の高配当株を選ぶとき、私は財務諸表をそれなりに読み込んでいました。自己資本比率、営業キャッシュフロー、配当性向。「この会社はコロナ程度では潰れない」と判断して組み入れた銘柄たちでした。実際、保有していた商社や銀行を含む多くの企業が、コロナ禍でも配当を出し続けてくれました。

株価は半分になっても、会社の本質的な価値が半分になったわけではない——そう頭ではわかっていました。感情は揺れていましたが、その認識だけは手放しませんでした。

「暴落はバーゲンセール」——買い増しの葛藤と決断

3月中旬、私はある決断をしました。現金を使って買い増す、という決断です。

当時、現預金はおよそ300万円ほどでした。「まだ下がるかもしれない」「追加で買って全部沈んだらどうする」という恐怖と、「ここで買わなかったら一生後悔する」という直感が、毎日ぶつかり合っていました。

最終的に、3月下旬から数ヶ月かけてNISAを活用し、200万円を追加投資しました。米国ETFよりも、会社の価値に比べて株価が大きく下がっていた日本株を新規購入したり、既存の銘柄を積み増したりしていきました。

※ 生活防衛資金(半年〜1年分の生活費相当)には手をつけないのが投資の基本原則です。私の場合も、防衛資金そのものは維持した上で、余裕資金の範囲内で追加投資に踏み切りました。暴落時の買い増しは、この前提が崩れないことを確認してからにするべきだと強く思っています。

正直、買いながら手が震えていました。「これで底じゃなかったらどうしよう」と思いながら、それでも買い続けました。

投資本でよく「暴落はバーゲンセールだ」という表現を見かけます。頭ではわかります。でもそれを実際にやるのは、本当に怖いものです。ただの言葉と、実際の行動の間には、かなりの距離があります。

回復の時間軸——プラスに転じたのはいつか

2020年4月下旬から、相場は少しずつ戻り始めました。

緊急事態宣言が発令されたのが4月7日。奇妙な話ですが、宣言と同時に相場は反転しました。「最悪期が見えてきた」という解釈が市場に広がったのだと思います。

私のポートフォリオが含み損ゼロ(取得原価と同等)に戻ったのは2021年秋頃のことでした。約1年半にわたって大きな含み損を抱え続けていたことになります。その後も市場は上昇を続け、投資元本に対して30%程度のプラスになったのは2022年末頃のことでした。

コロナ暴落後の回復記録 私の運用資産推移 2020〜2022年(底値買い増し・プラス転換)

図2:コロナ暴落前後の私の運用資産の推移(概要)。2月に約800万円あった評価額は3月末に約450万円まで下落し、その後2021年秋に含み損ゼロ、2022年末に投資元本比+30%となりました。(出典:筆者の運用記録より作成・概算値)

追加で買い増した分が、その後の回復局面で効いてきました。底値近くで拾った日本株の銘柄の中には、2022年にかけて+50%を超えるものもありました(私の場合・概算値)。

ただし、これはあくまで「私の場合はこうだった」という話です。同じ行動が次の暴落でも同じ結果になるとは限りません。

この経験から得た教訓——「グリップ力」こそが資産を作る

コロナ暴落を通じて、私がいちばん実感したことは「持ち続ける意志の重要性」でした。

感情で売らないためには、感情に先んじた「論理」が必要でした。「なぜこの会社を買ったのか」「この会社がどんな状況でも潰れないと判断した根拠は何か」——それを事前に整理していたことが、最終的なグリップ力になりました。

逆に言えば、トレンドやニュースでもてはやされている情報だけを鵜呑みにして買った銘柄があったとしたら、暴落時に私は間違いなく売っていたと思います。

もうひとつ気づいたのは、投資の継続には「許容できる損失額の見積もり」が事前に必要だということです。私は400万円の含み損を経験しましたが、それが生活に直接影響しない範囲であったから持ち続けられました。もし生活費ギリギリの資金を投入していたら、恐らく耐えられなかったと思います。

40代からNISAは遅い?という記事でも書きましたが、投資を始めるタイミングより「どうやって持ち続けるか」のほうが、長期的な結果を左右する要因として大きいと私は思っています。

コロナ暴落が教えたのは、投資理論ではなかった。値が半分になっても、売らずにいられる自分を作ることだった。