本記事は私個人の投資経験の記録です。特定の金融商品への投資を勧誘するものではなく、投資判断はご自身の責任で行ってください。
前提——「一生持ち続けたい」と思える銘柄だけ買う
買う前に、私はいつも自分に同じ問いを立てます。「この会社の株を、一生持ち続けられるか」と。
コロナ暴落で保有株が最大で半分近くまで沈んだとき、それでも売らずにいられたのは、この問いに「はい」と答えられた銘柄しか持っていなかったからだと思っています。逆に言えば、「なぜこの会社を持っているのか」を自分で説明できない銘柄があったなら、あの局面では間違いなく売っていたと思います。
その確信を持てる銘柄を見つけるために、9年かけて積み上げてきた基準が7つあります。
入口は「税引き後3%以上」——なぜ3.7%から逆算するのか
高配当株を探すとき、私がまず見るのは配当利回り3.7%以上という基準です。
なぜ3.7%なのか。これには理由があります。
NISA口座で保有し、かつ配当金の受取方法を「株式数比例配分方式」に設定している場合は、配当金が非課税になります。受取方法が銀行振込などの設定になっている場合はNISA口座でも課税されますので、ご自身の証券口座の受取設定をご確認ください。特定口座で保有する場合は、配当金には20.315%の税金(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)が自動的に差し引かれます。
逆算するとこうなります。
- 税引き前3.7% × (1 − 0.20315)= 税引き後 約2.95%
税引き後で実質3%近くの利回りが残る銘柄を入口にしています。例えば利回り3%の銘柄を特定口座で受け取ると、税引き後は3% × 0.797 = 約2.39%になります。「利回り3%台だから十分」と思っていても、特定口座では手元に残るのは2.4%程度であることを意識しておく必要があります。
NISA口座で保有できれば非課税なのでそのまま3.7%が手に入りますが、NISA枠には上限があります。枠を超えた分は特定口座になるため、常に「税引き後でいくら残るか」を意識しています。
財務指標5つでスクリーニングする
配当利回りの条件を満たした銘柄の中から、さらに財務指標で絞り込んでいきます。私が使っている基準は以下の5つです。
| 指標 | 私の基準 | 見ていること |
|---|---|---|
| PER | 15倍程度 | 割高な水準で買っていないか |
| PBR | 1倍程度 | 資産価値に対して適正な株価か |
| ROE | 8%以上 | 自己資本を使って稼ぐ力があるか |
| 自己資本比率 | 50%以上 | 財務の健全性・借金の少なさ |
| 配当性向 | 50%以内 | 配当が無理なく継続できるか |
※ 各指標の数値は私個人の目安であり、この水準を満たせば利益が保証されるものではありません。業種や事業特性によって適切な水準は異なります。
それぞれの意味を簡単に説明します。
PER(株価収益率)は、株価が1株あたり利益の何倍かを示します。15倍を超えてくると「割高」と感じるため、できるだけ15倍以内を目安にしています。
PBR(株価純資産倍率)は、株価が1株あたり純資産の何倍かを示します。1倍を下回ると理論上は「解散価値より安い」状態です。高配当株であれば1倍前後が一つの目安です。
ROE(自己資本利益率)は、自己資本に対してどれだけ利益を生み出しているかです。8%以上を一つの基準にしています。これが低すぎると、稼ぐ力が弱い会社と判断します。
自己資本比率は、総資産のうち自己資本が占める割合です。50%以上あると財務的に安定していると判断しています。借金が多い会社は景気悪化時に配当が削られるリスクが高くなります。
配当性向は、純利益のうち配当に回している割合です。50%以内であれば、利益の半分以上を社内に留保しながら配当を出していることになります。100%に近い、あるいは超えている会社は「無理をして配当を出している」可能性があり、将来の減配リスクが高いと判断します。
すべての条件を完全に満たす銘柄はほとんどありません。それでいいと思っています。「できるだけ条件に近い銘柄」を選ぶ目安として使っています。
SBI証券のスクリーニング機能で効率よく探す
私はSBI証券のスクリーニング機能を使ってこれらの条件を入力し、該当銘柄を絞り込んでいます。
SBI証券の「株式スクリーニング」では、配当利回り・PER・PBR・ROE・自己資本比率・配当性向などの条件を数値で入力できます。条件を入れると一覧で該当銘柄が表示されるため、数千銘柄を一から見ていく必要がありません。スクリーニングで絞った後、個別に財務諸表や業績の推移を確認していく流れです。
累進配当方針の会社は特別に評価する
財務指標の条件を満たした銘柄の中でも、累進配当を経営方針として掲げている会社は特に評価しています。
累進配当とは、「配当を減らさない、できれば毎年増やしていく」という方針です。これを明言している会社は、株主に対して誠実に向き合っている経営姿勢の表れだと感じています。
景気が悪い年でも配当を維持する覚悟を経営者が示しているということは、長期保有する側にとって大きな安心材料になります。同じ財務指標であれば、累進配当方針の会社を優先的に選び、保有株の積み増しを検討します。
セクター分散——景気敏感株とディフェンシブ株のバランス
銘柄を選ぶとき、同じセクターに偏らないよう意識しています。
同じセクターの銘柄は、景気の動向に対して似たような値動きをする傾向があります。銀行株が多すぎると金利動向に、商社株が多すぎると資源価格に、それぞれ大きく影響を受けます。一つのセクターが悪化した局面で、ポートフォリオ全体が同時に大きく下がるリスクを避けたいと考えています。
また、景気敏感株とディフェンシブ株のバランスも意識しています。
景気敏感株(商社・銀行・製造業など)は景気がいいときに大きく上がりやすいですが、景気悪化時には下げも大きくなります。ディフェンシブ株(食品・医薬品・インフラなど)は景気の波に左右されにくく、安定した配当が期待できます。
どちらかに偏りすぎず、両方を組み合わせることで、暴落局面でもポートフォリオ全体が一方向に崩れにくい構成にしています。
テーマ株は買わない
「AI関連」「脱炭素」「インバウンド」——投資の世界では定期的にブームが生まれます。テーマ株とはそういった時代の流行に沿って注目を集める銘柄群のことです。
私はテーマ株を基本的に買いません。
理由はシンプルです。流行で上がった株は、流行が終わると同じ速さで下がるからです。高値圏で注目されているときに買うと、テーマが一巡した途端に大きく値下がりします。しかもテーマ株は割高な水準になりやすく、PERやPBRが私の基準を大きく超えていることがほとんどです。
長期で持ち続けるスタンスの投資家には、テーマ株よりも「地味だが着実に稼ぎ続ける会社」のほうが相性がいいと思っています。流行に乗った高揚感より、静かな安心感のほうが長続きします。
不祥事・スキャンダルを起こした企業は買わない
財務指標がどれだけ良くても、不祥事や不正を起こした企業は買わないようにしています。
不祥事は単なる一時的なミスではなく、多くの場合その会社の組織体質や企業文化に根ざしています。「一度起こした不祥事は繰り返される傾向がある」というのが、いくつかの事例を見てきた私の実感です。
株価が一時的に下落して「割安になった」と感じる局面があるかもしれません。しかし、信頼性の低下は財務諸表には表れません。長期保有を前提にするなら、ガバナンス(企業統治)のリスクを抱えた会社は最初から外しています。
株主優待は「あると嬉しい」程度でいい
株主優待を目的に銘柄を選ぶ投資家も多いですが、私のスタンスは少し違います。
優待がある銘柄はいくつか保有していますし、優待の内容は好きです。ただ、優待は「配当と財務がしっかりしている前提で、さらに優待もある」という位置づけです。
優待を目当てに財務が弱い銘柄を選ぶことはしません。優待は突然廃止されることがあります。廃止された途端に株価が大きく下がるケースも珍しくありません。それよりも、配当と事業の健全性を軸に選んだ上で「優待もあれば嬉しい」という感覚で付き合っています。
まとめ——「一生持ち続けたい」かどうかが最後の問い
以上が、私が高配当株を選ぶときの基準です。まとめると次のようになります。
- 配当利回り3.7%以上(税引き後3%以上を確保)
- PER・PBR・ROE・自己資本比率・配当性向の5指標でスクリーニング
- 累進配当方針の会社を優遇
- セクター分散・景気敏感株とディフェンシブ株のバランスを意識
- テーマ株は買わない
- 不祥事企業は買わない
- 株主優待は「あると嬉しい」程度
すべての条件を完璧に満たす銘柄は存在しません。それでも「この会社の株主でいたい」と思える銘柄かどうか——最後はその感覚で判断しています。
財務指標は数字です。でも長期投資を続けるためには、数字だけでなく「この会社を信じられるか」という感覚も大切だと、9年間投資を続けてきて思います。
私がコロナ暴落でも売らなかった理由も、結局はこの「信じられる会社かどうか」という判断に支えられていました。
投資は自己責任です。本記事で示す投資基準は私個人の判断に基づく目安であり、同じ基準を採用しても同等の運用成果が得られることを保証するものではありません。過去の運用実績は将来の成果を保証しません。特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。