ご利用にあたって 本記事は、筆者個人の投資経験と調査内容を記録したものです。筆者は金融商品取引業者・投資助言業者ではなく、特定の金融商品・銘柄の購入、売却、保有を推奨するものではありません。議決権の行使・不行使についても、推奨や助言を行うものではありません。法令に関する記述は一般的な解説であり、個別の法的助言ではありません。
株主の議決権を行使しなくても、ペナルティはありません。
私も、行使していません。以前はしていましたが、コロナのあとくらいからやめました。理由は立派なものではなく、銘柄が増えて手が回らなくなったからです。
3月末に権利が確定した会社の総会は6月に集中します。その時期になると、封筒がまとめて届きます。以前は一枚ずつ開けて、議案を読んで、賛否をつけて返していました。それがいつからか、開けないまま週末が終わるようになりました。
ただし、Jリートだけは話が別です。ここは記事の途中で書きます。株式と同じ感覚でいると、意味が変わってしまうからです。
この記事でわかること
- 議決権を行使しないと、実際どうなるのか
- Jリートで「行使しない」が持つ、株式とは違う意味
- 私がやめた時期と、その理由
- 銘柄を分散すると、何が削られるのか
議決権を行使しないとどうなるのか
先に制度の話をしておきます。
議決権の行使は法律上の義務ではありません。三菱UFJ eスマート証券は「法律上、議決権行使は義務ではないため、投資家が議決権を行使しないからと言ってペナルティが発生するようなことはありません」と解説しています。行使しなかった議決権は、賛否のいずれにもカウントされません(三菱UFJ eスマート証券)。
配当を受け取る権利や株主優待そのものにも影響しません。ここを心配して検索してきた方は、その点は安心してよいと思います。
ひとつだけ、関係する話があります。議決権を行使した株主に、QUOカードやデジタルギフトを贈る会社があります。株主優待の一覧には載らないので「隠れ優待」と呼ばれることもあります。
ただ、多くは抽選です。行使すれば必ずもらえるというものではありません。行使した人全員に配る会社もありますが、そう多くはない印象です。
私はここを気にしていません。確実にもらえるものではありませんし、金額も小さいためです。ただ、拾いにいくかどうかは投資家それぞれの考え方だと思います。優待を積極的に集めている方であれば、行使する理由のひとつになるかもしれません。
一方で、会社側から見ると話は別です。株主総会には定足数(出席要件)や表決数(決議要件)があり、これを満たさなければ決議が成立しないとされています(東証マネ部!)。
なお、この2つの記事はどちらも議決権の行使をすすめる立場で書かれています。私はそれを読んだうえで、出していません。自分1人の不行使が結果を左右する場面は多くない一方、会社側には定足数という別の事情がある。その両方があるという事実だけ、ここに書いておきます。
Jリートの「みなし賛成」とは|行使しないと賛成になります
あとから知って、一番驚いたのがこれでした。
Jリート(投資法人)の投資主総会には、「みなし賛成」という制度があります。投信法93条1項に、規約に定めがある場合の扱いが書かれています。投資主総会に出席せず、議決権も行使しない。このとき、提出された議案に賛成したものとみなされます(議案が複数あり、互いに相反する趣旨のときは除かれます)。
さらに、このみなし賛成で賛成扱いになった議決権の数は、出席した投資主の議決権数に算入されるとされています。
つまり株式とは逆です。株式では、行使しなければ賛否どちらにもカウントされません。Jリートでは、行使しないことが賛成として働きます。
私は96銘柄のうち、11銘柄をJリートで持っています。封筒を返していないということは、私はJリートの議案には賛成し続けていることになります。これは知らずにやっていたことではなく、あとから制度を知って、そのうえで今もそうしている、という状態です。
「行使しないと何も起きない」と思っている方は、Jリートを持っているかどうかを一度確認してもいいかもしれません。株式と同じつもりで放置していると、意味が変わります。
以前はしていました。やめたのはコロナのあとくらいです
最初から放棄していたわけではありません。
投資を始めたのは2017年、40歳のときです。銘柄がまだ少なかったころは、届いた封筒を全部開けて、議案に目を通して返していました。会社の方針を自分で判断している感覚があって、株主になった実感が一番あった作業かもしれません。
やめたのはコロナのあとくらいです。正確に「この年から」とは言えません。ある日きっぱりやめたのではなく、返さない封筒が少しずつ増えていって、気づいたら1通も返していませんでした。
理由は単純です。銘柄数が増えたからです。
2026年5月時点で、私は96銘柄を保有しています。国内株とJリートが91、米国ETFが5です。招集通知が届くのは前者の91銘柄で、しかも基準日は3月末と9月末に集中します。総会シーズンには、それがまとめて届きます。
株主総会は平日開催。そもそも行けません
議決権行使書だけでなく、総会そのものにも参加していません。
ただしこちらは「削られた」のとは違います。最初から選択肢になかったというのが正確です。
株主総会は東京をはじめとする大都市圏での開催が多く、しかも平日です。地方に住んでいる会社員が参加しようとすると、有給を取って、往復の移動時間と交通費をかけることになります。銘柄が1つや2つだったころも、行ったことは一度もありません。
近年はオンライン参加を用意する会社も増えていますが、私はそこにも手を出していません。封筒を開ける時間すら確保できていないのだから、同じことだと思っています。
これは削られたのではなく、最初からなかった手間です。削られたのは、別にありました。
それでも、招集通知の封は開けています
ひとつ、書いておきたいことがあります。届いた封筒を捨てているわけではありません。
封は開けます。ただし、見るのは配当の支払開始日の欄だけです。
配当がいつ入るかは、招集通知に書かれています。権利が確定してから実際に振り込まれるまでには2〜3ヶ月あくので、私はここで日付を確認しています。この習慣は今も続いています。
つまり私は「全部やめた」のではなく、見る場所を1箇所に絞った状態です。議案には目を通さなくなりました。
自分でも、都合のいい株主だと思います。もらうものの日付は確認して、頼まれた意思表示はしていないわけですから。ただ、事実としてそうなっている、ということです。
議決権行使は面倒なのか。数分で終わるのに、なぜやめたのか
ここで当然の疑問が出ると思います。いまは議決権行使サイトがあって、スマホでも数分で終わります。手間というほどのものだろうか、と。
私も最初はそう思っていました。実際、入力そのものは数分です。
やめた理由は、入力の手間ではありません。議案を読んで、賛成か反対かを自分で決める時間です。
役員の選任、定款の変更、報酬の決定。中身を読まずに全部賛成で送ることもできますが、それなら意思表示をしている意味が薄い、と当時の私は感じました。かといって1社ずつ議案を読み込むには、総会シーズンの週末は短すぎました。
結果として、どちらでもない状態で止まりました。読む時間が取れないまま、封筒が積み上がっていったわけです。
分散投資のデメリットは、毎年繰り返す管理の手間です
一番書きたかったのは、この先の話です。
投資の本を読むと、分散はほぼ必ず勧められます。1銘柄に集中すればその会社の不調が直撃しますが、分散していれば影響が薄まる。それは実際にそのとおりだと、9年やって感じています。
ただ、分散には語られにくいコストがあります。
増える作業には、2種類あります。
- 一度きりの作業:買う前に配当と財務を調べる。1銘柄につき1回で終わる
- 毎年繰り返す作業:議案を読んで賛否を決める。毎年、同じ時期に、全銘柄分まとめて来る
銘柄が増えたとき、先に限界が来るのは後者です。買う前の調査は、9年かけて96回に分散されています。1銘柄を買う日に1回やればいいので、増えても分散されて吸収できます。
一方、議案の判断は分散されません。9年ではなく、毎年その時期に91銘柄分が重なります。
だから私の場合、削られたのは議決権行使でした。買う前に調べる作業は、いまも1銘柄ずつ残っています。PER、PBR、ROE、自己資本比率、配当性向。ここは9年間ずっと変わっていません。
結果として、私のやり方は「買う前に労力を集中して、買ったあとは基本ほったらかす」という形に落ち着きました。バラバラに手を抜いていたのではなく、一本の線でつながっていたのだと、あとから整理して気づきました。
ただし放置ではありません。減配・無配・企業のスキャンダル、そして買ったときに見ていた成長性や安定性のシナリオが崩れたときは、売ることがあります。降りる条件だけは決めてあります。
銘柄数の正解は、人によって違います
ここまで読んで「96銘柄は持ちすぎでは」と感じた方もいると思います。私自身、そう思うことがあります。
持てる銘柄数の上限は、その人が毎年どこまで手をかけたいかで決まります。議案を1社ずつ読んで判断したい人、総会に足を運びたい人であれば、私のような銘柄数は現実的ではないと思います。
逆に、私のように「買う前に調べ切って、あとは手を離す」という付き合い方であれば、銘柄数は増やせます。どちらが優れているという話ではなく、手のかけ方と銘柄数はセットで決まるということだと思っています。
分散を増やすときは、リスクの話だけでなく「毎年増える作業をどこで削るか」も一緒に考えておくと、あとで無理が出にくいのではないかと感じています。私は考えずに増やしたので、削るものが後から決まりました。
まとめ
- 議決権の行使は法律上の義務ではなく、行使しなくても株主にペナルティはありません。行使しなかった議決権は賛否のいずれにもカウントされません(三菱UFJ eスマート証券)
- Jリートは扱いが違います。規約に定めがある場合、出席せず議決権も行使しないと議案に賛成したものとみなされます(投信法93条1項)。株式と同じ感覚で放置すると意味が変わります
- 私は以前は行使していましたが、コロナのあとくらいからやめました。銘柄が増えて手が回らなくなったからです
- やめた理由は入力の手間ではなく、議案を読んで賛否を決める時間が取れなくなったことです
- 分散で先に限界が来るのは「毎年繰り返す作業」の方です。買う前の調査は年月に分散されますが、議案の判断は毎年まとめて来ます
議決権を行使すべきかどうかは、私が申し上げることではありません。ただ、銘柄を増やすと、毎年やることも同じだけ増えるという事実は、増やす前に知っておいてよいことだと思っています。9年前の私は知りませんでした。
