本記事は公表情報と筆者個人の体験にもとづく情報提供です。特定の銘柄・商品の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
地政学リスクは、株価に「直接」効くわけではありません。主に原油・金利・為替という3つの経路を通って、連鎖的に効いてきます。
2026年6月26日の朝、出社前にスマホを見ると「日経平均、一時3,000円超安」の通知が来ていました。歴代3位の下げ幅。でもこの日、私は何もしませんでした。売りもしない、買い増しもしない。達観していたから——ではなく、正直に言えば「またか」と思って画面を閉じただけです。そのくらいの距離感でいられたのは、この下げが「どこから来たか」の道筋が、ニュースの点と点をつなぐと見えていたからでした。
この記事では、中東情勢→原油→金利→為替→日本株という2026年6月に実際に起きた連鎖を一本の線でたどりながら、「地政学リスクと株価」の関係を、40代の個人投資家の目線で整理します。

この記事でわかること
- 地政学リスクが株価に効く3つの経路(原油・サプライチェーン・投資家心理)
- 2026年6月の日経平均の乱高下(歴代級の急落2回→月末7万円台)を因果でたどる実例
- 「読めない」ニュースに対して、40代の個人投資家が実際にやったこと・やらなかったこと
- 地政学ニュースが出たときに見るべき3つの数字
地政学リスクが株価に効く3つの経路
地政学リスク——戦争・紛争・政情不安といった政治的な緊張は、それ自体が株を売り買いするわけではありません。市場に届くまでには、必ず「経路」があります。代表的なのは3つです。
経路①:エネルギー価格(原油)
紛争地域が産油国やシーレーン(海上輸送路)に関わると、原油価格が動きます。原油が上がれば企業のコストが上がり、インフレ圧力になる。インフレは各国の中央銀行の金融政策(金利)を動かし、金利は株価の評価に直結します。「地政学→原油→インフレ→金利→株価」は、この10年で何度も繰り返された王道の連鎖です。2022年のロシアによるウクライナ侵攻の際も、原油高→世界的なインフレ→各国の急激な利上げという同じ経路で株価が動きました。
経路②:サプライチェーン(供給網)
部品・素材・物流が特定の国や海峡に依存している場合、緊張の高まりは「モノが届かない・作れない」という形で企業業績を直撃します。2020年代前半の半導体不足を経験した方なら、この経路の威力は実感があるはずです。
経路③:投資家心理
最も速く動くのがこれです。イベントの実害が出る前に、「わからないから、いったん売る」という資金の逃避が起きます。急落の初日はたいていこの経路で、実体経済への影響が織り込まれるのはその後です。
💡 ポイント ニュースで「地政学リスクで株安」と聞いたら、「3つのうちどの経路が動いたのか」を考えると、そのニュースの深刻度を自分なりに測れます。心理だけで下げたのか、原油や供給網という実体が動いたのかで、下げの「質」が違うからです。
実例:2026年6月、地政学リスクは株価にどう影響したか
理屈だけでは腹落ちしないので、直近の実例をたどります。今回は王道の3経路(原油・金利)に、枠外の要因が重なった月でした。2026年6月の日経平均は、こんな1ヶ月でした。
| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 6/3 | 史上最高値68,402円 |
| 6/8 | -2,563円(-3.85%)の急落で64,024円 |
| 6/16 | 日銀が政策金利を1.0%へ利上げ |
| 6/19 | 円相場が一時1ドル161円台(2024年7月以来の安値) |
| 6/22 | 8連騰で7万円台に到達 |
| 6/23 | -2,565円(歴代5位)の急落 |
| 6/26 | -3,005円(-4.15%・歴代3位)の急落 |
| 6/30 | 反発して70,062円で月末着地 |
(出典:日経平均プロフィル、第一生命経済研究所「政策金利1.00%への引き上げ」。数値は終値ベース)
一見バラバラの乱高下ですが、背景には地政学を起点にした連鎖がありました。

連鎖をたどる:中東→原油→米金利→日銀利上げ、そして半導体株安という別の流れ
この月、報道で指摘されていた流れを並べ替えると、為替は「思惑通りに進まなかった」ことが分かります。一本の線でたどります。
- 中東情勢の改善観測(停戦合意の報道)で、原油価格が下がった
- 原油安でインフレ圧力が和らぎ、米国の長期金利が低下した
- 日米金利差の縮小観測で一時的にドル売り・円買い圧力が生じ、そのタイミングで日銀が利上げ(1.0%)を実施した
- ところがその後、円は買われるどころか再び売られ、6月19日には1ドル161円台という2024年7月以来の円安水準まで進んだ。「利上げ=円高」という単純な図式にはならなかった
- これとは別に、海外(韓国)の半導体大手の弱さをきっかけに半導体株が世界的に売られ、日経平均を牽引してきたAI・半導体株にも波及した
- 利上げ後の過熱感調整も重なり、指数寄与度の大きい銘柄の下げが歴代級の急落2回として現れた
つまり6月の「歴代3位の急落」は、中東のニュースが直接日本株を売ったのではありません。地政学イベントが原油と金利、そして金融政策を動かした一方で、急落の直接の引き金は海外発の半導体株安という別の流れだった——複数の連鎖が同じ月に重なった玉突き事故でした。為替は「円高になるはずが、ならなかった」という、思惑通りに進まない典型例でもありました。
→ 日経平均が特定の銘柄に偏っている構造については日経平均が最高値でも私の高配当株は動かない|指数のからくりで詳しく書いています(※このリンクは末尾にも掲載しています)。
⚠️ 注意 この整理は報道をもとにした後付けの説明です。渦中では、この連鎖を事前に予測できた人はほとんどいません。「後からなら説明できるが、事前には読めない」——これが地政学と相場の関係の本質だと、私は考えています。
結論は「読めない」。では40代は何を構えるか
身も蓋もない結論ですが、地政学イベントの帰結を事前に当てることは、私たち個人投資家にはできません。プロでも外します。2026年6月も、「停戦で原油安」が「日本株の歴代級急落」につながると事前に描けた人がどれだけいたでしょうか。
だから私の備えは、予測ではなく「仕組みを知って、動かない」です。
6月の乱高下で、私がやったことを正直に書きます。
- 積立(新NISAのつみたて投資枠):何も変更しなかった
- 保有する高配当株:1株も売らなかった
- やったこと:ニュースで原油・金利・為替の3つの数字を眺めて、「ああ、あの連鎖か」と確認しただけ
「何もしない」は消極的に聞こえますが、中身があります。連鎖の仕組みを知っていると、急落が「わけのわからない恐怖」ではなく「説明のつく現象」に変わるんです。わからないものからは逃げたくなりますが、説明がつくものは持っていられる。コロナショックで含み損350万円を抱えても売らずに済んだ経験と、根っこは同じでした。
なお、2026年6月に実際に何が起きて何をしたかは、月次の振り返り記事にも書きました。→ 【2026年6月の振り返り】日経平均70,062円。40代投資家の私が実際にやったこと・やらなかったこと(あちらが「何が起きたか」、この記事が「なぜ起きたか」の深掘りです)
→ 暴落局面での判断はコロナの次が来た。ウクライナ・トランプ相場でも、私は一株も売らなかったに9年分の実体験をまとめています。
💡 補足 「動かない」を選べるのは、生活防衛資金(当面の生活費)を投資と別に確保しているからです。急落時に生活費のために売らざるを得ない状態だと、どんなに仕組みを理解していても「動かない」は選べません。仕組みの理解と資金の余裕は、セットで機能します。
地政学ニュースが出たら見る3つの数字
最後に、実用的な話を。地政学系のニュースが流れたとき、私が見るのは株価ではなく、この3つです。
- 原油価格(WTI原油先物):実体経済への波及が始まるかの入口。動いていなければ心理だけの下げの可能性が高い
- 米国の長期金利(10年債利回り):世界の株価評価の土台。原油とセットで動くと連鎖が本格化しているサイン
- ドル円レート:日本株への最終的な効き方を左右する変換器。円高方向なら輸出企業への逆風も意識する
株価チャートを何時間も眺めるより、この3つを1日1回見るほうが、ニュースと自分の資産の距離感がつかめます。2026年6月の場合も、株価の乱高下の裏でこの3つが順番に動いていました。
まとめ
- 地政学リスクは株価に直接効くのではなく、原油・サプライチェーン・投資家心理の3経路を通って連鎖的に波及する
- 2026年6月の歴代級急落2回は、中東→原油→米金利→日銀利上げという地政学の連鎖と、海外発の半導体株安という別の流れが同じ月に重なった結果だった
- 連鎖は後からなら説明できるが、事前には読めない。だから備えは予測ではなく「仕組みを知って動かないこと」
- 見るべきは株価より原油・米長期金利・ドル円の3つの数字
連鎖の途中で何が動いているかを知っていれば、急落のニュースは「わけのわからない恐怖」から「腹に落ちる現象」に変わります。次に地政学系のニュースで市場が揺れたときは、まず原油・金利・為替の3つの数字を眺めてみてください。

→ 日経平均が最高値でも私の高配当株は動かない|TOPIXとの違いと指数のからくり
→ 円安は40代の投資にどう効く?オルカン・高配当株を9年持った実体験
→ 9年間の全記録:40歳・500万円から6,000万円になった話
本記事は公表情報と筆者個人の体験・見解にもとづくものであり、特定の銘柄・商品の売買や投資手法を推奨するものではありません。市況・統計の数値は報道時点のものです。投資には元本割れのリスクがあります。投資判断はご自身の責任で行ってください。
