本記事は筆者個人の投資経験の記録です。特定の銘柄・売買を推奨するものではありません。株主優待の内容・有無は各社の判断で変更されます。投資判断はご自身の責任で行ってください。

株主優待の廃止には、意味のまったく違う3つの型があります。どの型かによって、売るか持つかの答えが変わります。

優待廃止のお知らせを見て、売るべきか迷っているところだと思います。9年間高配当株を持ってきて3つの型すべてに当たった私も、そのたびに迷いました。

廃止を知るのは、いつも証券アプリのニュース記事でした。9年間で、3つの型それぞれに1〜2回ずつ当たっています。

業績が悪化して優待を削る会社と、配当を厚くするために優待をやめる会社では、株主にとっての意味が正反対になります。株主優待は金券に換算して年10万円相当を受け取っていますが、この記事では3つの型それぞれで私が何を考え、売ったのか持ち続けたのかを書きます。

株主優待が廃止されたときの考え方

この記事でわかること

  • 優待を廃止した企業・新設した企業が実際に何社あるか(公表データ)
  • 優待の廃止・改悪に3つの型があること
  • 型によって「危険なサイン」なのか「歓迎すべき変化」なのかが変わること
  • 私がそれぞれの場面で実際にとった行動

廃止は過去最多、でも優待そのものは減っていない(2024年9月末時点)

型の話に入る前に、私の体感ではなく数字を確認しておきます。

大和インベスター・リレーションズの集計による、優待を新設した企業と廃止した企業の推移です(各年9月末までの1年間)。

新設した企業 廃止した企業 差引
2013年 70社 33社 +37社
2014年 82社 22社 +60社
2015年 102社 11社 +91社
2016年 108社 16社 +92社
2017年 94社 26社 +68社
2018年 106社 21社 +85社
2019年 89社 38社 +51社
2020年 53社 62社 △9社
2021年 42社 75社 △33社
2022年 57社 69社 △12社
2023年 75社 77社 △2社
2024年 107社 86社 +21社

2024年に廃止した企業は86社。過去12年間で最も多い数です。2019年までは20〜30社台だったものが、2020年に62社へ跳ね上がり、そこから水準が戻っていません。

ところが同じ年に、新しく優待を始めた企業も107社ありました。こちらは過去12年で2番目に多い数です。

結果として、優待を実施している企業は1,489社(同資料の集計による全上場企業3,987社に対して37.3%)と、前年より増えています。

つまり「優待が世の中から消えていく」という単純な話ではありません。やめる会社と始める会社が、どちらも増えている。ただし、やめる会社の数は過去最多を更新している——ここが、優待のある銘柄を持つ側にとって効いてくる部分です。

なお、全部やめることだけが改悪ではありません。同じ資料では、保有期間によって優待内容に差をつける企業が600社(実施企業の40.3%・前年は38.5%)に増えています。この記事で扱う3つの型は、いずれも優待そのものがなくなるケースです。

📊 出典 大和インベスター・リレーションズ「株主優待の最新トレンド」(PDF・2025年1月公表/2024年9月末時点・2026年8月閲覧)。本記事執筆時点で公表されている最新版です。実施率の分母となる全上場企業数はREITを含み、外国株式・ETF・TOKYO PRO Market等は含みません。また廃止には「一時休止」の表現を含み、記念優待の実施・終了は集計対象から除かれています。

9年持っていて廃止に何度も当たったのは、私が特別に運が悪かったからではなかった、というのがこの数字を見たときの実感でした。

型①:業績悪化による改悪——私は危険なサインと受け取った

業績悪化による優待改悪は危険なサイン

いちばん分かりやすいのがこの型です。業績が振るわず、コストを削る一環として優待を縮小・廃止する。

このケースで私は売却しました。理由は単純で、株価も下がっていたからです。優待を削らなければならない状況ということは、次に来るのは減配かもしれない——そう考えると、撤退やむなしという判断でした。

高配当株を持つ目的は配当です。その配当の原資が細っているサインが出ているなら、優待の有無以前の問題になります。優待の縮小は、その会社が置かれている状況を教えてくれる指標のひとつだと受け止めています。

減配の兆候をどう見ているかは、高配当株の選び方を間違えると配当が消えるにまとめています。

型②:配当を強化するための振り替え——一長一短

ここが、この記事でいちばん書きたかった型です。

近年、優待をやめて、そのぶん配当を厚くするという発表をする会社があります。優待は現物やサービスなので、受け取れる株主とそうでない株主に差が出やすい。それなら全株主に等しく配当で返そう、という考え方です。

高配当株を持っている立場からすると、これは一見ありがたい変更に見えます。金券より現金のほうが使い道は自由ですし、配当なら再投資にも回せます。

ただ、私の実感は「一長一短」です。

理由は、優待の廃止が発表されると株価が下がることがあるからです。優待を目的に持っていた株主が売ることで、評価額が下がる。私が見てきた範囲でも、銘柄によっては10%以上下がったことがありました。配当が増えても、そのぶん保有株の評価額が減れば、差し引きでどうなのかは一概に言えません。

配当が増えたことだけを見て「得をした」と考えるのは早い、というのが実際に経験しての感覚です。

⚠️ 注意 優待廃止+増配の発表に対する株価の反応はケースによって異なります。必ず下がるわけでも、必ず上がるわけでもありません。ここに書いたのは私が経験した範囲の話です。

型③:買収・上場廃止による消滅——株そのものがなくなる

上場廃止で株が手元から消えるとき

3つ目は、優待どころか株そのものが手元から消える型です。他社に買収される、経営陣による買収(MBO)が行われるなどして、その会社が上場をやめる。当然、優待も終わります。

このとき、株主には大きく2つの道があります。ひとつは買付者による公開買付け(TOB)に応じること。TOBは、買う側が「1株◯円で買います」と価格と期間を決めて株主から直接買い集める手続きで、応じるかどうかは株主が選べます。もうひとつは、上場廃止になる前に証券会社のアプリからいつもどおり売ってしまうことです。何もしないでいると、上場廃止後は株式併合や株式等売渡請求といった会社側の手続きで整理されます。私の場合は後日その案内がハガキで届いたことがありますが、受け取る対価が現金になるか買収会社の株式になるかは案件によって異なります。

私は早めに売ってしまうことが多いです。手続きを待つ方法もありますが、その間、資金は動かせません。上場廃止が決まった時点で売ってしまえば、その資金を次の銘柄へ移せます。資金を止めておく時間を短くしたい——それが私の判断基準です。

ただし、売る前にTOB価格と、いま画面に出ている株価を必ず見比べています。株価がTOB価格を下回っているなら、急いで売るほうが損になります。売買手数料も含めてどちらが手取りで多いかは案件ごとに違うので、実際の判断は各社の開示資料を確認してからになります。

💡 補足 この型は、自分の投資判断とは無関係に終わりが来ます。銘柄をどれだけ吟味していても避けられません。分散して持っておくことの意味は、こういう場面でも出てくると感じています。

①業績悪化と②配当振り替えは発表文だけでは見分けられない|売る前に見る3点

ここまで型に分けて書きましたが、実際にリリースを読むと困ることがあります。業績が苦しくて優待をやめる会社も、②と同じ言葉づかいで発表するからです。「株主還元の公平性の観点から配当へ一本化します」——この一文だけでは、どちらの型なのか判断できません。

私が見ているのは、発表文の言葉ではなく次の3点です。

  1. 増配が同時に発表されているか。優待の廃止だけが単独で出ているなら、私は①を疑います
  2. 増えた配当が、優待の相当額をカバーしているか。優待をやめたぶんに対して増配が明らかに小さければ、公平性は建前かもしれないと考えます
  3. 直近の決算が減益になっていないか。減益なのに配当性向(利益のうち配当に回す割合)が上がっているなら、無理をして配当を出している可能性があります

いずれも決算短信とリリースに書いてあることなので、確認そのものは数分で終わります。これは私が自分の持ち株を見るときの手順であって、正解を示すものではありません。

どの型でも、私が慌てずに済んだ理由

型によって対応は変わりますが、どの型のときも私が慌てずに済んだ理由はひとつです。

優待を目的に銘柄を選んでいないからです。

私の選定基準では、優待は「配当と財務がしっかりしている前提で、さらに優待もあれば嬉しい」という位置づけにしています。優待を主目的に買っていたら、廃止された瞬間に保有する理由がなくなってしまいます。そうならない設計にしてあるので、廃止されても「では配当と業績はどうか」という本題に戻るだけで済みました。

年10万円相当の優待は、正直ありがたいものです。届いた日は嬉しい。でもそれは、あくまで配当という土台の上に乗っているおまけだと考えています。

実際に何が届くのか、9年分の中身は届いた優待を全部並べた記事に書きました。

まとめ|「廃止」の理由を見れば、次にやることが決まる

  • 優待の廃止・改悪には3つの型があり、意味はそれぞれ違う
  • ①業績悪化による改悪を、私は危険なサインと受け取った。株価も下がっており売却した
  • ②配当への振り替えは一長一短。配当が増えても評価額が下がることがある
  • ③買収・上場廃止は株そのものが消える。私はTOB価格を確かめたうえで早めに売る
  • ①と②は発表文の言葉が似ているため、増配の有無・増配額・直近の決算で見分けている

いま手元の銘柄で廃止の発表を見ているなら、最初にやることは売るか持つかの判断ではなく、どの型なのかを確かめることだと思っています。増配が同時に出ているか、その増配額は優待の相当分に見合うか、直近の決算は減益になっていないか。この3つを見るだけで、慌てて売る必要があるのかどうかの見当はつきました。

私自身が最初にやった一歩は、優待の内容で銘柄を選ぶのをやめて、配当と財務を先に見るようにしたことでした。優待は、そのあとに来るおまけです。

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本記事は個人の投資経験に基づく記録であり、特定の銘柄・売買時期・投資手法を推奨するものではありません。株主優待の内容・有無、TOBや上場廃止の手続きは各社・各案件により異なります。株式投資には元本割れ・減配・無配のリスクがあります。投資判断はご自身の責任で行ってください。